こいつは大潮の日、夕暮れ時に釣ったマングローブジャック37センチ。今回はこいつについての物語。
この日は午前からずっと浜辺の炎天下の中を歩き、昼からもキャンプ場からの帰りでヒッチハイクが捕まらず県道の炎天下を歩いた。宿に帰ってから疲れてごろり。
少し寝てしまい夕方。まだまだ西表島は明るい。今日は大潮の日。大潮はマングローブの小さい川にも水がよく入ってきて河口あたりはよく釣れる。
確か少し前に、釣り好きのステファンが大潮の日にトゥゲザーしようと言っていた。ステファンはウーフとしてカリブ海の住まいから家族で西表島に引越してきたフランス人。日本語が全くダメ。彼の奥さんは日本人なので通訳してもらってそんな話になったのを思い出した。
すぐに用意して歩いて15分。かなり疲れていたはずなのに釣りになるとどこまでも歩けてしまう。
ステファンが住む農園を通るとステファンと子供二人がいた。ポイントは農園からすぐそこのマングローブの川。
ステファンが僕に気づき、「おお!きたかー!俺はもう忙しいから釣りは出来てないが、そこの橋の下からマングローブの方向に向かって投げれば釣れるよ!!」
とかなんとか言っている気がする。
彼は暇があればいつも自家製の練りエサを仕込みここで釣っているのだ。今日はまだしていなかったようで、僕が彼のポイントで釣りをするのをかなり楽しみにしているようだった。
まぁステファン。そこまで言うな。言わなくともすでに僕はここで以前、釣りをしているのだ。橋の下へどう降りるか、下がどうなっているかも全てわかっている。ただ、その時は何も釣れなかった。
でもステファンが今日は!今日は釣れる!!と言っている気がする。ほとんど何言ってるか分からない。
とりあえず、橋の下からマングローブ林に向かい僕のお手製のルアーを投げる。橋の上からはステファンファミリーが橋の柵にもたれ掛かり覗いている。
ステファンの小さい息子たちがデカイのがいるよ!!ほら!投げて投げて!と騒いだりする。子供達は結構日本語ができる。
数投なげても当たりがないので、思い切ってマングローブ林の細くなっていく方向に遠投した。
ポコンポコンと僕のハンドメイドルアーを泳がす。ルアーはトップウォーターだ。その動きが水面から見える。少し動かし止める。
それを数回繰り返すとバコン!!と食いついた。
グーと竿に重さが来る。いいサイズ。以前は全く反応のなかったポイントなのに大潮で満潮前だとこうなる。
橋の上はお祭り騒ぎ。きっと僕よりもヒットからファイトまで川の中の状況がわかりやすく見えているのだろう。ステファンはビッグワン!!ビッグワン!!と僕を煽っている。
西表島のマングローブでオーディエンスが頭上で騒ぎ竿が目一杯しなるのにかなり興奮して、力一杯にリールをぐるぐる巻いた。無事その魚をキャッチした。
頭上にいるステファンファミリーからおめでとうと祝福された。サンキューと返す。
そしてその辺に生えている木の枝を折り枝先を魚のエラから通して縄の代わりにつかった。
すぐさま同じところにキャストするとまた釣れた。サイズは少し落ちたが十分に引いた。橋の上はまたお祭だった。たのしかった。
大潮の日に2連続で釣る。ステファンは「もうここは君のスポットだ!!」というような事を言ってくれた。
もう当たりがこなくなり、暗くなったのでやめることにした。
そのままステファンが農園のキッチンで小さい方のマングローブジャックを捌いてくれる事になった。ステファンはカリブ海ではシェフとして働いていたので刺身にするのはお茶の子さいさいだった。
皮も綺麗にとっていて、上手くとるね、この皮!と指さすと、
「なんだ皮が好きなのか??」
と言われ、まぁ美味いよね皮も!と返事をしたら皮付きの刺身もしてくれた。
ちょっと怖かったが、元シェフのステファンがそうするのなら問題ないのだろう。
釣ったばかりのマングローブジャックはとても噛みごたえのある魚。まぁ普通だなぁという感じ。そんなにたくさんいらないくらいだった。農園で食べてステファンに車で宿まで送って貰う。また行こうぜ!という事で。
ところ刺身は一晩熟成させると上手くなる。
デカイ方のマングローブジャックを宿に持って帰り冷蔵庫で一晩寝かせ次の日の夕食とする事にした。
次の日の夕方、宿のキッチンでステファンを思い出しデカイやつを捌く。
一晩ねかしたマングローブジャックの刺身はとても美味しそうな色に仕上がっていた。釣ったばかりの刺身はここまで綺麗なピンクではなかったような気がする。
この日の夕食は豪華だった。
同じ宿に住むヒカリちゃんが八重山そばで焼きそばを。
僕は昼間に貝も採っていた。
そしてマングローブジャックの刺身と素揚げ。
もう見た目からしてうまそうな一晩置いた刺身はほんとに美味かった。釣りたてのマングローブジャックと全く違った。マイルドでやわらい。すっきりした味がする。イサキに似ている。
この夕食ができるのが本当に好き。お金をかけずに食べれるって事に、そのへんで食料が手に入るっていう事にいつも何かを感じる。これが未だに言葉にできない。取り敢えず言うとグッとくるのです。
宿の近くの絶品中華屋の片桐ラーメンも美味いが、やはりこの夕食が西表島では一番良かった。